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第103回検討会討議《職域における新型コロナウイルス感染症対策の課題と現状 vol.4》

職域における新型コロナウイルス感染症対策

職域における新型コロナウイルス感染症対策の課題と現状 vol.4

職域多施設研究(J-ECOH)は、関東・東海に本社を置く企業(約10万名)が参加する大規模コホート研究です(研究代表者:土肥誠太郎先生、事務局:国立国際医療研究センター疫学・予防研究部)。 働く世代における生活習慣病や作業関連疾患を予防することや、職域健康診断の有効性や効率を高めることを主な目的としています。

毎月開催している検討会では、原著論文の輪読や研究動向の発表、情報交換などを行っています。2020年4月からは、新型コロナウイルス感染症に関する現状と課題の共有をめざした討議をオンラインミーティングとして行っています。

2020年7月10日 検討会

1.概要

 長濱先生(東京ガスカスタマーサポート株式会社)のファシリテーションのもと、職域における新型コロナウイルス感染症対策に関する全体討議を行いました。今回は、以下のアンケートへの回答を踏まえて討議を行いました。
  • Q1. 前回検討会(2020年6月)から現在に至るまでの期間で、産業医として携わった新型コロナ対策についてお聞かせください。
  • Q2.今後1か月の間に、職域での取り組みで特に重要になるであろう事項についてお考えをお聞かせください。(例)第二波にむけて現在講じている対策など
  • Q3. 現在、産業医として新型コロナウイルスに対応していく上で、困っていることがあればお聞かせください。(例)他の産業医の先生に取り組み内容を聞いてみたいこと
  • Q4. 新型コロナウイルス感染症に関して検討会参加者に紹介したい情報(ウェブサイト、論文など)があれば教えてください。
以下にディスカッションの概要をまとめます。

2.これまでの取り組み

「Q1. 前回検討会(2020年6月)から現在に至るまでの期間で、産業医として携わった新型コロナ対策についてお聞かせください。」という問いに対してあった回答をもとに討議を行った。今回は、日本渡航医学会と日本産業衛生学会による『職域のための 新型コロナウイルス感染症対策ガイド 』に記載されている「風邪症状ある社員は即日休み・ 発症後8日以上かつ症状消失後3日以上経過するまで自宅隔離」をどの程度徹底できているかについて状況を回答するようにも依頼した。
  • 日本渡航学会・産業衛生学会のガイドの遵守状況
    • 運用している。
      • 有給と同じ扱いの特別休暇を有給とは別に付与。診断書の提出が条件。
      • 自社で自宅待機に関する要件が決められており、厳守されている。
      • 「特別休暇」はなく、年次有給休暇で対応している。遵守されている。なお、年休を消化した場合は、傷病欠勤が適用される。
      • 有給以外に設けてある、傷病看護休暇を使っている。
    • 改変して運用している/あまり運用できていない。
      • 「風邪症状のある社員は即日休み」は徹底できているが、自宅待機については守れていない。
      • 通知は行っているものの、運用されていない嘱託先が多い。
      • 発症後8日以上はまだ徹底されていない
      • 感染者が多くない地域のため、症状消失後45時間以上にしている。
      • 交替勤務の場合「3日以上」の扱いが難しいので、48時間としている。
  • 情報提供・感染予防対策
    • 新型コロナによるストレスに関する情報提供
    • 業務再開に際しての感染対策・問い合わせ対応
      • 企業館の再開で意見を求められた。
      • 工場見学再開について意見を求められた。
    • 熱中症防止とコロナ対策の「綱引き」
      • 厚生労働省のポスターの掲示を行って熱中症防止を呼びかけ。
      • 水分摂取をきちんとするように言っている。
      • 衛生委員会の資料に入れる。衛生管理者から対応基準の展開。所内報に記事。
      • マスクの使用
        • 室内でも十分距離(2m)を取っていたらマスクをとってよいとしている。会話するときはマスク着用を推奨。
        • 距離が十分あればマスクはいらないとしている(できれば5m)。
        • 屋外作業では、マウスガード/クリアマスクを着用。
      • 巡視時の注意喚起
        • なお、巡視時には、産業医と衛生管理者のの疲労防止のために30-60分に1回マスクとる休憩時間を設定している。
    • 遠隔産業医契約を行なっていた工場に初めて訪問。
      • 衛生講話、職場巡視を実施。衛生講話は、社内ルールを分かりやすく説明するような内容にした。
      • それまでは、teamsを使用して産業医活動を行っていた。関西の工場では既にコロナが終わったような印象(東京とは対応が異なる)
  • 重症化予防
    • 重症化する可能性のある疾患を持っている従業員
      • 個別に主治医と連携し、あるべき配慮の仕方を検討。
      • 明らかにリスクがわかっている人(ステロイドや免疫抑制剤内服中、透析中の人)に関しては、診断書がなくても本人の報告で在宅勤務にさせている。
      • 血栓症の既往があり、重症化を心配して在宅を希望する人がいた。
      • 緊急事態宣言中は在宅にしていたが、現在は原則は出社に戻している。配慮が必要な場合は希望に応じて一部在宅勤務。
      • 今後は海外勤務者に求められる健康状態も、従来より厳しくなる可能性もある。
    • 妊婦
      • 妊娠で重症化リスクが高いという報告あり(米国CDCの報告)。
      • 妊婦に対する対応は職場、本人と確認し、対応している。
      • 妊婦は希望があれば在宅勤務等の配慮をしている。
      • 主治医指示で、早めに産休に入る女性社員に関する意見書を作成した。
      • 妊娠中の女性の在宅勤務の推奨、母健カードの活用などは積極的に企業に助言してもいいのではないか。
  • 在宅勤務を要因とした健康障害事案
    • 肺塞栓症(エコノミー症候群)が発生。
      • ずっと座っている状況による影響かと思われる。高血圧治療は受けてはいたが、重症ではなかった。
      • 数社で報告例あり。注意喚起が必要。J-ECOHとして症例収集をするとよいかもしれない。
      • 過集中の傾向がある人はなりやすいのかもしれない。
      • 座卓と正座、胡坐はリスクが高い。
      • 息苦しさを訴える在宅勤務者が搬送されてきた場合に肺塞栓症を疑うという救急医の話を聞いた。
    • 糖尿病の悪化
      • 宴会がなくなって糖尿病が改善したという事例もあった。
    • 高脂血症の悪化
      • 内服していても悪化した。
    • VDT症候群も増えているかもしれない。
    • 在宅勤務期間中に3人も休職者が出た職場があった(上司のケアが悪い職場)。

3.今後の対策

「Q2. 今後1か月の間に、職域での取り組みで特に重要になるであろう事項についてお考えをお聞かせください。」という問いに対してあった回答をもとに討議を行った。
  • 感染予防に対する意識
    • 市中でも会社でも陽性者の数が増えている。
    • 個人の感染防御策を継続することを再度徹底させたい。
    • いわゆる「夜の街」における感染対策
      • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)によって、クラブは外部から客室が容 易に見えないようにしないといけない。換気が悪く、有効な感染予防対策が立てにくい。
      • アルコールありの会食はやめるように指導している。
    • 換気の悪さ
      • 二酸化炭素濃度が6000ppmとなっている職場があった。
  • 感染発生時の対応
    • 職場内クラスターが発生した場合の対応をきちんと準備。シミュレーションを進めている。
    • 事業継続計画(BCP)の中に含めている。
  • Withコロナ時代の産業保健
    • 時差出勤、時短勤務、在宅勤務実施のための施策、環境つくり
      • 情報提供を行っている。
      • 出勤者の数を減らしている。
    • 出張者(国内も含む)の移動前後の症状の把握について
      • まだ全く手がついておらず、今後の課題だと認識している。
      • 国内出張の後に発熱した社員がおり、PCR検査を実施(結果は陰性)。
    • その他の疾患のケアと予防、高リスク事象の可及的除去
    • 震災時BCPの新型コロナ対策/BCPの練り直し
      • 嘱託産業医なので、関与できる範囲にも限界があるのは事実なのだが、なかなか準備が進んでいない様子。今後の課題。
    • メンタル不調を生じる従業員への対策
      • 新型コロナウイルス感染症に対して不安や恐怖を感じる社員がおり、出退勤を嫌がる社員も。
      • 新型コロナウイルス恐怖尺度
      • https://plaza.umin.ac.jp/~dp2012/data/fcv19sj.pdf
      • 育児が原因で、在宅勤務をストレスに感じている社員もいる。個人の事情にあわせて在宅勤務をすすめるように会社に呼び掛けている。
      • 重症化するまで周囲が気づかなかったのかもしれないと思わせる事例も出てきた。
    • 季節性インフルエンザの予防接種
      • 集団接種に応じてくれる健診機関等の選定
      • 企業内で実施する場合のワクチンの確保(集団予防接種を実施したことがある会社なら対応できそうだが、今年から実施しようとしていた会社は難しいのでは)
  • 感染発生動向の把握
    • 首都圏の感染者数増加への対応(都道府県ごとのバラツキ)

4.困っていること・現状の課題

「Q3. 現在、産業医として新型コロナウイルスに対応していく上で、困っていることがあればお聞かせください。」という質問に対しての回答をもとに意見交換を行った。
  • 新型コロナ感染症対策
    • 社員に発熱等の症状が出た場合に、疑わしい時期に接した業者・顧客に対して、情報共有をどのように実施しているか
      • 出入りの業者には個別に連絡することになる。
      • まだそのようなケースは起こっていないが。発生した場合は、プレスリリースを出すことになると想定している。
      • 発熱が3-4日続いた時点で「念のため伝えた」と顧客に伝えるように助言している。
  • 検査
    • 企業診療所で唾液PCRでやりだしたところもあるらしい。いろいろと問題ありそう。経産省が推進している。
    • 万が一陽性者が出た時の対応まできちんと検討しているのか疑問。
  • 海外派遣再開の時期
    • 社内の産業衛生部門と海外派遣の部門が、一緒になって討議できていない。国から指針が出るのを待つしかないかと考えている。
    • 役員決済が出ないと海外派遣ができないようにしている。
    • 今後は海外勤務者に求められる健康状態も、従来より厳しくなる可能性
  • 非正規社員への対応
    • 飲食チェーン店の産業医活動を行っているが、バイトの方々が解雇になっている。彼らの新型コロナウイルス対策をどうするべきか。
    • 契約が単年度の非正規の65歳以上の労働者の契約を更新しない事例が出てきている。
    • バイト確保も難しいので、有給自宅待機にしている企業の話を聞いたが、そろそろ限界だとのことだった。
    • 大学は非常勤職員が半数程度。現時点では雇用は保たれている。
  • 第2波に向けた準備
    • 無駄な施策ばかり降ってきてリソースを取られる。
    • 準備ができない。消毒薬は来ないし、PCRは無駄うちばかりで試薬が限界に近い。
    • 嘱託先では、従業員のサイズにあった手袋が入手出来ないようだった。
    • マスクは足りてきたが、保護具やエプロン等の入手がいまだに難しい。
  • 産業保健活動
    • 日々の面接指導をリモートで運用することがやはり難しい。
      • google meetを使用している。
      • 実際会って面談しないと分からないこともあるのでまだ模索中。

5.参考になる情報

「Q4. 現在、産業医として新型コロナウイルスに対応していく上で、困っていることがあればお聞かせください。」という質問に対しての回答と討議の途中に出た意見を下に示す。
  • 経済産業省
    • PCR検査が受診可能なトラベルクリニック等のリスト
    • https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200703002/20200703002.html
  • 米国疾病予防管理センター(CDC)
    • 米国CDCのレポートでは入院リスクが5.4倍、ICUに入るリスクが1.5倍、人工呼吸器を導入されるリスクが1.7倍高いと報告されている。ただし、死亡リスクは変わらない。
    • https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6925a1.htm?s_cid=mm6925a1_w#T2_down
  • 日本産業衛生学会 産業衛生技術部会
    • 換気シミュレーター
    • http://jsoh-ohe.umin.jp/covid_simulator/covid_simulator.html

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