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第101回検討会討議《職域における新型コロナウイルス感染症対策の課題と現状 vol.2》

職域における新型コロナウイルス感染症対策

職域における新型コロナウイルス感染症対策の課題と現状 vol.2

職域多施設研究(J-ECOH)は、関東・東海に本社を置く企業(約10万名)が参加する大規模コホート研究です(研究代表者:土肥誠太郎先生、事務局:国立国際医療研究センター疫学・予防研究部)。 働く世代における生活習慣病や作業関連疾患を予防することや、職域健康診断の有効性や効率を高めることを主な目的としています。

毎月開催している検討会では、原著論文の輪読や研究動向の発表、情報交換などを行っています。2020年4月からは、新型コロナウイルス感染症に関する現状と課題の共有をめざした討議をオンラインミーティングとして行っています。

2020年5月15日 検討会

1.概要

 前回に引き続き、黒田先生(東京大学)のファシリテーションのもと、職域における新型コロナウイルス感染症対策に関する全体討議を行いました。今回は(1)新型コロナウイルスに関するガイドの確認と(2)事前に実施したアンケート結果に基づいた全体討議を行いました。アンケートの質問項目は以下の通りです。
  • Q1. 前回検討会(2020年4月)から現在に至るまでの期間で、産業医として携わった新型コロナ対策についてお聞かせください。
  • Q2. 今後1か月の間に、職域で取り組むことが特に重要になってくるだろう事項についてお考えをお聞かせください
  • Q3. 新型コロナウイルス感染症への対応として御社が取り組んでいることで、共有したい取り組みがあれば教えてください(ベストプラクティスの共有)。
  • Q4. 新型コロナウイルス感染症に関して検討会参加者に紹介したい情報(ウェブサイト、論文など)があれば教えてください。
以下にディスカッションの概要をまとめます。

2.ガイドの確認・運用状況・課題

具体的なケースを想定し、新型コロナウイルス感染症対策ガイド(日本渡航医学会/日本産業衛生学会)で推奨されている対応を確認したうえで、どのような運用をしているか、どのような課題があるかについて全体討議を行った。
【ケース1】
感染を疑う症状を呈した従業員がいるとの報告を受けた。

(ガイド)

  1. 社内で前もって、①全社員、毎日検温・体調を記録する。 ②風邪症状ある社員は即日休み・ 発症後8日以上 かつ 症状消失後3日以上 経過するまで自宅隔離(出勤不可・在宅勤務できる場合は在宅勤務可)としておく。
  2. その上で、当事者が発熱している場合には、新型コロナウイルス感染症の可能性がより否定できないとして、本人発症2日前~最終接触日(理想的には発症1日前になるなず)の間、本人と接触していた者にはその後14日間は体温・体調をより注意深く観察する。
  3. 本人が発症2日前~最終出勤日までに勤務していた場所・その周辺・共用物は、しばらく人立ち入りを避けられるなら3日は立ち入りさせない、即日に入室・勤務・共用するなら防護を講じて確実に消毒する。

(ディスカッション)

  • 検温について
    • 嘱託産業医先では毎日検温しているが、記録まではさせることができていない。
    • そもそも体温の情報を聞いていいのか。
  • 自宅待機
    • いつまで、風邪症状だけで8日間および症状改善後3日間休ませるのか?
    • 過度に休業させることはいかがなものか。
    • 徹底するのは難しい。
    • 現状は家で休ませるしかできない。
    • 発症後8日以上かつ症状消失後3日以上という日数は、欧州疾病管理センター(ECDC)の隔離ガイドラインに基づくもの。
  • 症状の確認・検査
    • 症状が多様。
    • まずは症状の確認が必要。その上で必要に応じて帰国者等相談センターに連絡して、診断を早く確定したいところ。
    • 医療機関に受診をさせて、検査を受けさせることが優先。受けられるまでは自宅待機を指示。
  • 各社での基準策定
    • ガイドQ&Aの(8):産業医の助言を受けて事業者が独自の基準を決めることは否定されていない。
    • 2と3の対応を取っている。保健所から指導もある。
    • 産業医の助言で事業者が独自の基準を決めることは現時点では難しいのでは。
    • いや、うちは決めた。
    • 統括産業医が機能している会社なら、独自基準の作成も可能か。
    • マスク着用状況、換気のよさなども事業者ごとに違う。
【ケース2】
感染を疑う症状を呈した従業員がいるとの報告を受けた。
【ケース3】
入院していた従業員がPCRで2回陰性になって自宅待機となった。いつ職場に復帰させるか相談を受けた。

(ケース2・ガイド)

  1. 退院基準(入院した場合はPCR検査2回陰性確認・自宅療養の場合は発症後14日間経過)を満たす+2週間は自宅待機(在宅勤務可)。
  2. 復職は、退院後1週間以上経過してから。

(ケース3・ガイド)

  1. 退院後1週間以上経過してから。

(ディスカッション)

  • 退院基準後の復職のタイミング
    • 1週間の自宅待機を勧めます、とした。
    • 2週間の自宅待機を勧めている。
    • 新しいガイドラインでは退院後1週間としている(国が就業制限が外れると言ってしまったため)。
  • 濃厚接触者
    • 濃厚接触者の調査は必要か:産業医がいれば必要。
    • 同僚の濃厚接触調査は不要でしょうか。保健所の指示にもよるかと思いますが。
  • その他
    • 中小企業はとても厳しい。
    • PCRで2回陰性は省略されるのでは。

3.これまでの取り組み

「前回検討会(2020年4月)から現在に至るまでの期間で、産業医として携わった新型コロナ対策についてお聞かせください。」という問いに対してあった回答をもとに討議を行った。
  • 情報提供(一般向け)
    • 中小企業向け新型コロナ対策情報配信プロジェクト(継続)、第1回ウェビナー。
    • 中小企業家の会合で経営者からの相談に応じた。
    • 「中小企業における好事例集」策定に向けた研究企画。
      • WEB上の情報交換を行っている好事例集を作成している。
      • 産業保健のみでなく社労士なども関わっている。
    • 学会ガイドラインなどの情報の配信、在宅勤務中の過ごし方についての資料作成。
      • ガイドラインでも質はまちまち。より良いものを提示するべき。
  • 情報提供(社内・嘱託)
    • 嘱託産業医先の事業者・衛生管理者と情報交換。
    • 中小企業からの対応相談。
    • 母性健康管理に関する改訂情報の提供
    • 帰国者への対応(社内連携不足による混乱あり)
    • 寮の使用について
      • 労務管理と一緒に議論
      • 共同浴場は使用禁止。食堂は距離を取るように指示。
  • 在宅勤務
    • 在宅勤務デフォルトの状態での復職支援の申し合わせ作成
    • 在宅勤務が長期化する上での就業規則改正について資料提供
    • 在宅勤務中の過ごし方
      • 換気に関する情報提供
      • 主にテレワーク者に「こころの耳(厚生労働省)」のセルフチェックを教えて、問題を感じたら連絡するよう、と社員にメール。
      • テレワーク者へのメンタルセルフチェックの紹介。
      • 産業医や保健師がメンタルのサポート
      • 生活リズムやPC作業姿勢の注意点の発信。
      • 会社のポータルでエクササイズについて発信。
      • 同時刻に少人数グループでラジオ体操をやるという会社があります。
      • NHKの超ラジオ体操のリンクを15時に案内。
      • オリジナルなエクササイズを契約インストラクターが案内してくれている。
      • 健康テーマごとに1枚のパンフレットのような形で発信。
      • 社内報(電子版)に在宅勤務者に向けた記事(身体面とメンタル面)を書いて欲しいという依頼あり。
      • 在宅勤務のコラムの作成。
    • 生活習慣への影響
      • ハイリスク者への休業中の配慮は?在宅勤務で食生活の乱れなどは?
      • 社員の平均歩数が、5万歩/月(1日1500歩位)、減っている。
      • 健康増進活動の完全自己管理化は課題。
    • 在宅勤務の取り組み状況
      • 基本的に在宅勤務を実施しているが、在宅できない業務の人のみ出勤。
    • 「在宅勤務なら復職可」問題
      • 在宅勤務なら復職可という診断がよくある。在宅勤務が通常ではないので、復職は難しいのではないか。復職は認めないけどWEBなどでサポート
      • 通勤勤務になったら勤務できない可能性もあるため「在宅勤務なら職場復帰可能」という診断書が提出されたが却下した。在宅勤務をデフォルトの勤務とみなしていないため。
      • 「在宅勤務なら職場復帰可能」と本人が考えて診断書を提出した人がいた。本人と面談して、就業可能レベルに達していなかったので、本人説得して、その後上司と今後の対応を遠隔ミーティング。
    • 職場復帰判定
      • 従来と同じ評価をするようにしています。但し、リワークのトレーニングをどうさせるかが迷わしい。図書館も休館している。
      • 1年以上休職していた方の復職が緊急事態宣言中の復職になってしまったので、BCP要員にして通勤してもらった。
    • 自宅のwifiに補助金が出る。
  • 事業継続・事業再開のための方策
    • 担当建屋の困りごとヒアリング、感染予防対策実行状況の確認
    • 事業場が今後感染症対策レベルを下げていくときに必要な安全衛生対策のTipsづくり。
    • 過大な対応をとらないようなアドバイスする
    • 事業場で出勤再開後の感染症対策に関する情報提供、体調不良者の把握ルール策定、罹患時ハイリスク者への就業上の配慮に関するルール策定
      • 工場の大規模定期修理が始まり、1日1000~1500人の請負作業者が入構予定。社員以外の作業者の感染対策が課題。
    • 有症状者対応の相談、工場で集団感染が起きた時のトライアル
    • 海外赴任
      • 糖尿病の社員などは海外赴任には配慮している。
      • 喫煙者をどう扱うか難しい。喫煙はハイリスクだが、生活習慣に関わることであり、がんなどとは別で扱われている。
      • 喫煙者が多い業種では喫煙者に配慮すると事業が立ち行かないという現状もある。
      • 海外に赴任するには、航空会社やビザ申請のために感染していないことの証明を提出することが求められる。
      • 要配慮者をどうするかについて人事と対応でもめている。
      • 海外に社員を再赴任させる企業もある。健康証明を書くような依頼が出てきている。
        • 陰性証明を頼まないでくれ、と切実な話もある。
    • 「出口戦略」
      • 在宅勤務や時差出勤が通常に戻るという変化を強いる。折角慣れた現状を戻すのは大変。新たな問題が起こる可能性も。
  • 既存の産業保健活動
    • 健康診断実施時の感染対策の検討
      • 十分な対策をとったうえで健診を実施している。
      • 帰国した赴任者に対しても2週間の自宅待機後に実施。
    • 健康診断の適性実施助言(帰国者健診省略不可)
    • 通常と異なる形での復職支援(緊急事態宣言によるリワーク中断後のイレギュラー対応)
    • 電話による社内診療所
      • 社内診療所を電話診療のみに変更にするのは大変だった。
      • 電話診療は受診に時間をかけたくない従業員には好評。
      • 電話診療は好評。薬剤は構内便と宅急便で送っている。

4.今後の対策

「Q2. 今後1か月の間に、職域で取り組むことが特に重要になってくるだろう事項についてお考えをお聞かせください。」という問いに対してあった回答をもとに討議を行った。
  • 感染予防策
    • 通常業務再開に向けた業務の感染リスクアセスメントとリスク低減対策の準備
      • 今後1か月の感染動向次第で、準備が異なる。
    • 緊急事態宣言下にあっても出社を余儀なくされる労働者の感染防止・メンタルヘルス対策。
      • 在宅勤務者のためにメンタルヘルス情報を流したら、エッセンシャルワーカーとして普通に出勤している社員から、自分たちのほうがストレスたまるという意見があった。
    • ハイリスク行動
      • 今後は体調不良でも出社してしまう人がいるかもしれない。4月上旬にもいた。
      • 喫煙率の高さ、無理してでも出社しなくてはいけない経済状況などの問題が重なっている職場は特に注意が必要。
    • 注目すべき業種(例)
      • 小売り
      • 映画館、飲食業など、これまで休業(開店休業)の状態にあった業種
      • 訪問介護事業の感染防止対策
    • 課題
      • 感染者を介護する場合どうするか
      • マスクを不着用時の顧客・利用者からのクレーム。
  • 感染発生時の対応
    • 有症状者集団発生時の対処の準備
    • 社内で感染者が出た場合に、接触していない社員で事業を継続するかについて
    • 再流行に備えた事業計画策定のための助言
  • 変容する働き方への対応
    • 柔軟な働き方のベストプラクティスを収集して、組織内外で水平展開したい。
    • 勤怠管理
      • 上司の対応力・マネージメント方法を検討する必要がある。
        • メールでのやり取りが中心で直接コミュニケーションをとるのが難しい。
        • 会社の端末を配っており、作業状況を把握することは可能。
      • 成果主義が大きくなるのでは? 時間ではなくクオリティーで評価される。
    • 具体的な対策案
      • スカイプ等のITツールを活用してのミーティング。
      • 対面での食事を控えさせる。
      • 体温や体調の管理
      • アプリの導入:提案したが管理が大変ということで却下された経験。
      • 建屋の入り口に体温測定カメラと警備員を増設。37度以上で入館できない。
      • 虚偽申告ができないような制度が必要。
    • 予算のない事業所での対策は大変。
  • 在宅勤務・新しい生活様式
    • 今後は在宅勤務と出社を織り交ぜるのが一般的になるかもしれない。
      • 在宅勤務で効率が良い作業もあるので、続ける方針。
      • 新型コロナが終息すれば、すぐに通常に戻すというのはやりすぎか。
    • 昨日、厚労省が出したチェックリストに「新しい生活様式」の項目が入った。
    • 休憩
      • 集中しすぎを防ぐために、休憩を促すメッセンジャー通知。
      • 勤務時間と同じ時間に食事をとるような指示。
    • 健康管理
      • 在宅勤務者へのストレス対策および生活習慣病対策。
      • 在宅勤務者のストレスによる影響は現段階でも問題だが、今回の危機が一段落した時により大きく顕在化する可能性もある。
      • 「在宅勤務者のストレスによる影響」を調べる場合、新型コロナへの不安とか、雇用不安等の影響をどうやって除外したらよいか思案中。
      • 体調と勤務の両立がしやすくなった社員もいる。
    • 健康診断実施時の衛生管理
      • 健康診断の在り方の検討。混雑を避けるため、行きつけの医療機関で受けて任意提出するなど。 
    • マスク着用が原則となる勤務形態における熱中症対策
      • 冷やしマスク
      • 工場内の空調の整備/エアコンと換気の管理
        • 屋外の作業者はどうするか?
      • フェースガードやフェースシールド
        • どれだけ感染予防になるのか?
        • 目や顔面への飛沫付着を減らすかもしれないが、咳エチケットになるのかは要確認。
        • 業種別ガイドラインにフェイスシールドが例示されてしまった
        • 適切な交換頻度や消毒方法が知りたいです。
      • ネックゲイター
      • 3密を避ける
        • マスクをつけなくてもできる感染対策。
        • 職場によっては3密を避けることが難しい。
      • そもそもどのくらいマスク着用で体温が上がるのか?

5.ベストプラクティスの共有

「Q3. 新型コロナウイルス感染症への対応として御社が取り組んでいることで、共有したい取り組みがあれば教えてください(ベストプラクティスの共有)。」と「Q4. 新型コロナウイルス感染症に関して検討会参加者に紹介したい情報(ウェブサイト、論文など)があれば教えてください。」という問いに対してあった回答をもとに討議を行った。
  • 働き方の柔軟性を高める
    • 育児向けのテレワーク週2回までの制限を、コロナ対応で無制限とした。
    • 来客用駐車場を持病のある社員が利用できるようにした(対象者は産業医と協議)
    • 感染予防としての働き方の柔軟性を考えることが今後の働き方の柔軟性へつながる。
  • 感染予防の徹底
    • オフィス環境で注意すべきことをベースに一般的な3密環境をチェック。
    • 業種特有のリスクに応じてチェックポイントを追加してく
      • コールセンター、運輸業者、医療機関への配送業、葬儀業者
      • 現在、81業種の感染予防ガイドラインが出されている。
        https://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline_20200514.pdf
  • コミュニケーション
    • 労働者に対して、困りごとや欲しい健康情報はあるか?というアンケートを行った
      • 休憩の取り方の難しさ
      • 相手の状況がわからない
      • 1人で作業する難しさ
      • 運動不足
      • メールが増える
      • 配偶者も在宅勤務で音が気になる
      • 間食が増える
      • 肩こり・腰痛
    • リモートワーク実施の枠組みが最も遅れている本務先事業場で、Slack、Teams、Zoom などを用いてコミュニケーション量の確保を行うようになっている雰囲気を感じます(不調者フォローアップ面談を通じて)

6.参考になる情報

「新型コロナウイルス感染症に関して検討会参加者に紹介したい情報(ウェブサイト、論文など)があれば教えてください。」という質問に対しての回答をもとに意見交換を行った。
  • He, Xi, et al. "Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19." Nature medicine (2020): 1-4.
    • 発熱者の8日間自宅待機の根拠(おそらく)となっているであろう論文。
    • https://www.nature.com/articles/s41591-020-0869-5.pdf
  • 労働基準局長からの要請文
    • 産業衛生学会のガイドが引用されている。
    • 「産業保健職の役割」について言及してある。
  • いまここケア(東大精神保健学教室)
    • https://imacococare.net/
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下におけるこころの健康維持のコツ(日本うつ病学会・訳):
    • https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/2020-04-07-2-covid-19.pdf
  • こころの耳(厚生労働省)
    • https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/coronavirus_info/

7. その他・感想

  • 統括産業医がいない嘱託産業医先の限界を感じる。
  • COVID-19の抗体保有率の検査を健診のついでにやれないか。
  • BCP部門で「コロナ明け」を検討中です。今のBCP事例はエッセンシャルワーカーがいるところだったので、そうでない企業の事例に関する情報がほしい。

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