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第104回検討会討議《職域における新型コロナウイルス感染症対策の課題と現状 vol.5》

職域における新型コロナウイルス感染症対策

職域における新型コロナウイルス感染症対策の課題と現状 vol.5

職域多施設研究(J-ECOH)は、関東・東海に本社を置く企業(約10万名)が参加する大規模コホート研究です(研究代表者:土肥誠太郎先生、事務局:国立国際医療研究センター疫学・予防研究部)。 働く世代における生活習慣病や作業関連疾患を予防することや、職域健康診断の有効性や効率を高めることを主な目的としています。

毎月開催している検討会では、原著論文の輪読や研究動向の発表、情報交換などを行っています。2020年4月からは、新型コロナウイルス感染症に関する現状と課題の共有をめざした討議をオンラインミーティングとして行っています。

2020年9月11日 検討会

1.概要

 長濱先生(東京ガスカスタマーサポート株式会社)のファシリテーションのもと、職域における新型コロナウイルス感染症対策に関する全体討議を行いました。今回は、以下のアンケートへの回答を踏まえて討議を行いました。
  • Q1. 前回検討会(2020年7月)から現在に至るまでの期間で、産業医として携わった新型コロナ対策についてお聞かせください。
  • Q2.今後1か月の間に、職域での取り組みで特に重要になるであろう事項についてお考えをお聞かせください。(例)第二波にむけて現在講じている対策など
  • Q3. 現在、産業医として新型コロナウイルスに対応していく上で、困っていることがあればお聞かせください。(例)他の産業医の先生に取り組み内容を聞いてみたいこと
  • Q4. 新型コロナウイルス感染症に関して検討会参加者に紹介したい情報(ウェブサイト、論文など)があれば教えてください。

2.最近の取り組み

「Q1. 前回検討会(2020年7月)から現在に至るまでの期間で、産業医として携わった新型コロナ対策についてお聞かせください。」という問いに対してあった回答をもとに討議を行った。
  • 日本渡航学会・産業衛生学会によるガイドライン
    • 2020 年 8 月 11 日に改訂(第3版)。
    • 学会の更新があるたびに健康管理担当者に共有はしている。
    • 会社が設定した基準を遵守しており、ガイドラインを特別に取り上げるような状況ではないため、職場で周知してはいない。
  • 感染者への対応、重症化予防
    • 罹患者(PCR陽性者・無症状者含む)の退院・復職基準の見直し
      • ガイドラインを遵守。
      • 社内の基準を満たしたら、在宅勤務で復職してもらうというローカルルールを作った。
      • PCR検査
        • PCR検査による陰性確認がなかなかできず、特別休暇を与えて出社を止めている社員がいる。
        • 感染から14日経過すれば問題ないと思われるが、出社を控えてもらっている。
        • 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)から21日前の陽性者との接触を知らせる通知が届き、その間症状がなかったにも関わらずPCR検査となったケースがあった。PCR検査対象となると、その日から起算して2日間に接触した人全員が14日間の自宅待機になってしまう。
          • 同様の状況でも、PCR不要と保健所が判断したケースもあった。
        • 厚生労働省は「症状なし10日」を「PCR陰性2回」と同様であるとみなすという運用を既にしている。PCR至上主義から脱却する必要がある。
      • 感染後咳嗽で周囲が不安になっている状況だったため、自宅待機命令を出して、賃金保障した(1週間)。
    • 社員の家族が発症・体調不良時の対応について
      • 家族に37.5℃以上の発熱があれば休業させている。
      • 何かあった際に会社の責任が問われることを避けるために、家族の場合も対応している。
      • 家族がハイリスクであるために、在宅勤務にしてほしいという社員の希望もありそう。
      • 同居家族の対応は本人が診断された場合と同じ対応をしている。
      • 家族からの感染を防ぐために、ホテルに宿泊するための補助を出して欲しいという相談が来た。
    • 重症化リスクを有する社員への対応
      • 健診データをふまえて、重症化リスクがある社員をリストアップし、面談。
        • しかしながら在宅勤務ができない職場・従業員の場合、注意喚起以上のことはほぼできない。
        • 本人の仕事を奪うことにもつながる。
        • 在宅勤務が認められない契約社員に対して、会社としての配慮で在宅勤務を一部認めるというケースがあった。
      • 重症化リスクが低い人から出勤してもらっている(交通・運輸業)。
      • 免疫疾患
        • 全身性エリテマトーデス(SLE)のようなステロイドを服用する免疫疾患について、重症化リスクは低いという論文もある。
          • 易感染性は他の人と変わらない。在宅勤務をすすめている。
        • 診療手引き(3版 9/4)では、免疫疾患はリスク要因としてまだ確立してないと記載されている。
        • 個人的な見解であることを断ったうえで、ハイリスクであると思うという意見を伝えた。
      • 悪性リンパ腫の化学療法後の社員に対して、自宅待機の徹底を指導した。
    • 感染者、感染疑い者への差別、偏見防止について
      • あまり活動できていない。
      • 日本赤十字の資料をもとに情報提供をしている。
      • 感染経路を社員に探索しないように伝えている。
      • 感染拡大当初から差別禁止を経営陣から繰り返し伝えてもらうようお願いしている。
      • >社内ではじめての感染例となった経営陣の一人に対して、感染したことを謝罪せず、逆に「療養のために休みをいただきありがとう」と感謝するよう依頼した。
  • 感染拡大予防策の策定と周知
    • 来客者向けの来社ルールを策定、ポスターを作成し掲示
    • クラスター防止対策について担当者と再検討・社員再周知
      • 8月の安全衛生委員会でクラスター発生事例の共有を行った
    • 感染対策に関する職場巡視
      • 感染対策の良い例があれば、周知するようにしているが、過剰なところもある。
  • 「新しい生活様式」の負の健康影響の対応
    • マスク着用下における熱中症対策は継続して行っている。
    • アルコール多飲に伴う入院があった。
      • 3例。繰り返す失神、静脈瘤破裂等。
    • 職場のコミュニケーション不全が顕在化し体調不良となる職員・社員が増加
      • コロナでもともとあったコミュニケーション不全が顕在化したのではないかと考えられる。
  • インフルエンザ
    • インフルエンザワクチンの受診勧奨。
    • 2020年度国内供給数を提示しながら、早めに予約・接種するよう社内周知した。
  • 外部への情報提供
    • 厚生労働科学特別研究事業「職場における新型コロナウイルス対策のための業種・業態別マニュアルに資する研究」で、オフィス向けのマニュアルを作成中。

3.今後の対策、現在困っていること

「Q2. 今後1か月の間に職域での取り組みで特に重要になるであろうこと、産業医として新型コロナウイルスに対応していく上で現在困っていることがあればお聞かせください。」という問いに対してあった回答をもとに討議を行った。
  • 感染予防に対する社員の意識の向上
    • 社員の対策の緩みが散見される中、社内でのクラスター発生を防止していく必要がある。
    • マスク着用が義務化されている職場を巡視中に、マスク非着用(顎マスク含む)のまま会話している社員がいた。
      • 衛生管理者や上司を通じて本人に伝達。
      • 巡視報告に記載する。
    • 労働安全衛生週間(10月1日~7日)の産業医の衛生講話を録画し、全従業員への配信を予定
  • 感染発生時の対応
    • 家族が陽性者で自宅療養となった場合、社員本人はどこで生活すれば良いか?
      • 自宅で過ごし続けると、家族の感染リスクが増す・濃厚接触者の期間が長くなる。
        • 一戸建てに居住している場合は、接触減らして生活するように指導。
      • 家族全員が陰性にならないと、本人も濃厚接触者でなくならないので、職場復帰まで時間がかかる。
      • 寮を使っている。
  • 発熱や風邪症状を認める社員の職場復帰の目安について
    • 日本産業衛生学会・日本渡航医学会のガイドライン
      • 「発症後に少なくても8日が経過している」および「薬剤を服用していない状態で、解熱後および症状消失後に少なくても3日が経過している」の両方の条件を満たすこと。
        https://plaza.umin.ac.jp/jstah/pdf/corona03.pdf
    • 基本は上記ガイドラインに従うものの、手探りな部分もある
      • 症状消失後3日を採用している。
      • 「発症後8日が経過」の方が重要では。
      • 地域の流行状態にもよる。流行している地域では、発症後8日が経過のほうが重要か。
      • 明らかに他の原因による可能性が高い場合(生理・花粉症)は、産業医が判断する。
      • 症状がなくなれば、在宅勤務してもらっている。
  • 「新しい生活様式」
    • 元々平熱の高い人が、病院受診や入店を断られたことがあり、その対応(社会生活面
      • 平熱が高いことを示す証明書等の発行を検討している
      • 平熱が高い原因を調べてみたところ、体温計が故障していたということがあった
  • 新型コロナウイルス感染症対策「以外」の安全衛生関連施策
    • 4-6月に延期された健診対応などの既存の安全衛生活動で手一杯
    • 重要な法改正や通達が多く出ているが対応の余裕がない
      • エイジフレンドリーガイドライン
      • ハラスメント防止法
      • 有害業務関連
      • 副業・兼業の促進に関するガイドライン 等
    • 風しん5期予防接種の推奨も昨年ほど進んでいない
  • インフルエンザ
    • 3密を回避しながら、予防接種をどのように実施するのか
    • 薬液不足対応
    • 検査
      • 鼻咽頭のコロナ検査も併用するとなると防護対応が重要になる。
      • そもそも企業の診療所でインフルエンザを診るのかどうか
        • 結果的にインフルエンザも5日間休めば治るので、診ず確定せずで対応?
    • 厚生労働省から高齢者やハイリスク者を優先的に接種させるようお願いが出た。
      • 今後、厚労省からの情報を確認する必要あり。

4.参考になる情報

「Q3. 新型コロナウイルス感染症に関して検討会参加者に紹介したい情報(ウェブサイト、論文など)があれば教えてください。」という質問に対しての回答と討議の途中に出た意見を下に示す。

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