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第106回検討会概要 100回記念シンポジウム《職域における新型コロナウイルス感染症対策の課題と現状 vol.7》

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職域における新型コロナウイルス感染症対策の課題と現状 vol.7

職域多施設研究(J-ECOH)は、関東・東海に本社を置く企業(約10万名)が参加する大規模コホート研究です(研究代表者:土肥誠太郎先生、事務局:国立国際医療研究センター疫学・予防研究部)。 働く世代における生活習慣病や作業関連疾患を予防することや、職域健康診断の有効性や効率を高めることを主な目的としています。

毎月開催している検討会では、原著論文の輪読や研究動向の発表、情報交換などを行っています。2020年4月からは、新型コロナウイルス感染症に関する現状と課題の共有をめざした討議をオンラインミーティングとして行っています。

2020年11月7日 第106回検討会 100回記念シンポジウム

1.概要

J-ECOHスタディ検討会の100回開催を記念し、Webシンポジウムを2020年11月7日(土)に開催した。J-ECOHスタディ研究顧問である大久保利晃先生(一般財団法人労働衛生会館 会長)からのご挨拶、検討会の歴史を振り返るプレゼンテーション(堀愛先生 筑波大学)、高出席率者の表彰に加えて、土肥誠太郎先生(三井化学株式会社)と大曲貴夫先生(国立国際医療研究センター)に講演していただいた。

2.教育講演 With コロナ時代の働き方改革 (土肥誠太郎先生 三井化学株式会社)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による労働環境・生活環境の変化は、勤労者にとって身体的・心理的に大きな負担となっている。感染収束への道筋がいまだに見通せない状況の中、産業医として一連の健康問題にどのように対応すべきかということをテーマにご講演いただいた。
 講演では、三井化学でこれまでに行ってきた感染予防対策(発熱者や検査陽性者への対応、テレワークの推進等)が紹介されたほか、全国と比較した社内での感染率の低さや、テレワークに関する社内でのアンケートの結果が紹介された。アンケートでは「テレワークをしてみて良かったと感じたこと」「良くないと感じたこと」を選択肢を示して尋ねたほか、自由記述欄を設けることで、社員が抱える具体的な問題や問題解決につながるグッドプラクティスをいち早く把握することができたという。
 さらに、健康影響評価 (Health Impact Assessment)のアプローチを活用して、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うテレワークがどのような健康影響を引き起こしうるかを評価する取り組みも紹介された。起こりうる健康問題を列挙したうえで、複数の産業医がそれらに優先順位をつけ、社員への注意喚起の内容を決めるというものである。労働環境が急激に変化する状況下で、社員の健康を守る有効なアプローチであると考えられる。

3.特別講演 新型コロナウイルス感染症の臨床(大曲貴夫先生 国立国際医療研究センター)

 臨床の最前線で、また東京都における新型コロナウイルス感染症対策審議会の委員として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に取り組まれて来られた、国立国際医療研究センター国際感染症センターの大曲貴夫センター長を講師としてお招きした。
 講演では、COVID-19の基本的な病態や標準的な治療法、NCGMで治療した感染者の病状と治療経過、さらには早期発見・感染予防対策の重要性など幅広い視点から解説していただいた。無症状でもマスクを着用するというユニバーサルマスキングが世間に受容され、3密(密閉・密集・密接)の概念が広がっている一方で、依然として存在する無関心層へのアプローチの難しさを課題として挙げられていた。
 COVID-19に関するレジストリ研究(COVID-19 Registry Japan)についてもご紹介いただいた。2020年6月以前に比べるとそれ以降は、入院時の重症度や入院後に死亡する割合が低下していることがデータ上も確認できた。早期発見や治療法に関する知見が蓄積したことが、こうした第2波での重症化率・死亡率の低下につながっている可能性があるという。
 講演後の土肥誠太郎先生との対談では、日本と海外における国民の感染予防行動の違い、リスクコミュニケーションにおける医療従事者の心掛け、ワクチン開発やオリンピック開催に伴う今後の課題などについての見解をお話しいただいた。

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