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第108回検討会討議《慢性疾患(特に糖尿病)の管理》

概要

「慢性疾患(特に糖尿病)の管理」をテーマに、第108回J-ECOH検討会を2021年3月6日(土)に開催した。J-ECOHスタディのメンバーによる発表(増田将史先生、大津真弓先生、福永亜美研究員)に加えて、特別講演として坊内良太郎先生(国立国際医療研究センター)にご講演いただいた。

コロナ禍における慢性疾患の管理

(1)コロナ禍が慢性疾患の管理に及ぼす影響についての考察
   (増田将史先生 イオン株式会社)

コロナ禍及びそれに伴うテレワーク普及といった勤務環境変化に伴い、労働者の心身への負担が懸念されている他、慢性疾患への管理にも影響を及ぼす可能性がある。一方、長距離通勤から解放され、余暇や睡眠時間、そしてオンライン診療の普及とも相俟って、通院機会が確保できるといったメリットもあると思われる。現時点で客観的なデータによるコロナ禍の影響についての検証は少ない。コロナ禍前後での健診結果等による検証を試みたので報告する。


(2)コロナ禍のリモートワーク推進は糖尿病の血糖コントロールを悪化させる?~三事例+αからの考察~
   (大津真弓先生 合同会社ひまわり)

労働者にとっては、リモートワークにより、通勤がなくなるだけでなく、オフィスと比較すると狭い自宅の中でしか移動しなくなることで、出勤する場合に比べて労働者の身体活動量が大幅に低下するという一側面がある。糖尿病を基礎疾患に持つ労働者が、リモートワークを始めてから血糖コントロールが悪化した具体的事例を3つと、職種上リモートワークが出来ないため、出勤を継続しているのに血糖コントロールが悪化した事例について話題提供し、コロナ禍が糖尿病の血糖コントロールに与える影響について考察する。

論文紹介

論文題名:「糖尿病・前糖尿病と自殺との関連:J-ECOHスタディ」
担  当:福永亜美

事務局の福永亜美研究員がJ-ECOHスタディのデータを使用して執筆し、Journal of Psychosomatic Research誌に発表した、糖尿病・前糖尿病と自殺との関連を検討した論文を紹介した。

Fukunaga A, et al. (2020). Diabetes, prediabetes, and suicide deaths in a Japanese working population. Journal of Psychosomatic Research, 138:110246. doi: 10.1016/j.jpsychores.2020.110246. 

特別講演 糖尿病診療におけるデジタルヘルス技術の進歩と今後の課題PRISM J から見えてきたこと
(坊内良太郎先生 国立国際医療研究センター)

国立国際医療研究センター糖尿病内分泌代謝科/糖尿病情報センター臨床情報研究室室長の坊内良太郎先生を特別講演の講師としてお招きした。

講演では、医療の進歩とともに複雑化した糖尿病領域では、患者の利便性が高く、医療者の負担軽減が可能なデジタルヘルス技術が求められており、予防・診断・治療などに関わる多数のデバイスやアプリが報告されてきている一方で、これらのデバイスやアプリに関しては、安全性や有効性の評価及び得られた情報の標準化が十分にできていないこと、アプリの評価基準が明確でないこと、飽き(継続率の低さ)の問題などの課題があることをお話しいただいた。

上記のような背景を踏まえて、坊内先生が研究事務局を務めるIoT(アイオーティー:身の回りの機械がインターネットを通じてつながることにより実現する新たなサービスや技術のこと)活用による糖尿病重症化予防法の開発を目指した研究(PRISM-J)についてご紹介いただいた。本臨床研究は、糖尿病領域のIoT活用に関する世界最大規模・最長レベルの無作為化比較試験であり、本研究の特色、強み、得られた結果、今後の課題など幅広い視点から解説いただいた。今後診療レベルでIoTを用いるためには、患者の日々の食事・運動・服薬状況などの健康関連情報と電子カルテ上の医療情報を標準化・統合し、質の高い研究成果をさらに積み上げていく必要がある。そのためには、政府、技術者、医療者、研究者、患者、保険者などが利活用可能な医療や健康管理に関する仕組みが急務であるという。

特別講演後の増田将史先生(イオン株式会社イオングループ総括産業医)としていただいた討議では、コロナ禍における糖尿病の管理の状況(受診控えなど)や、PRISM-J研究の今後の発展及び展望、職域と医療の連携についてご自身の研究や臨床での経験を踏まえて見解をお話しいただいた。