第111回検討会概要《マインドフルネス認知療法入門/新型コロナウイルス感染症に関する総合討論》
前の記事 | 次の記事名古屋経済大学人間生活科学研究科教授・同大学マインドフルネスセンター所長の家接哲次先生をお招きし、「マインドフルネス認知療法入門」と題した特別講演をしていただいた。
マインドフルネスとは、仏教で説かれる四諦八正道のひとつである「正念」に由来し、あるがままの状況に注意をむけることと定義される。本特別講演では、瞑想が元来持つ宗教的要素を排除したうえで、うつ病の再発予防などのために臨床現場で多く活用されているマインドフルネス認知療法について、実際に行われるプログラムの詳細(8セッション、毎週1回各2時間+ホームワーク)、エビデンス、有害事象、バーンアウトへの効果についてご解説いただいた。講演の最後には、マインドフルネス認知療法における瞑想セッションを実演していただき、参加者のマインドフルネスへの理解を深める時間とした。
非常に包括的で、マインドフルネスの基礎から実践を知れる良い機会となった。個人的にはマインドフルネスにも有害事象があること、マインドフルネスは自分の考えから距離を取る方法の一つであるということがとても印象に残った。
マインドフルネスは職域でも注目されているためか、非常に多くの参加者が特別講演に出席した。なお、職域で取り入れる場合は日本マインドフルネス学会の先生方に相談いただくとよいとのことだった。また推薦図書として、「最強の休息法」(久賀谷亮・著)をご紹介いただいた。 (文責:長濱さつ絵)
1.概要
長濱さつ絵先生(東京ガスカスタマーサポート株式会社)のファシリテーションのもと、職域における新型コロナウイルス感染症対策に関する全体討議を行った。今回は、以下のアンケート項目への回答を踏まえた討議を行った。- Q1. 新型コロナ第5波の中で、産業医として実施した新型コロナ対策についてお聞かせください。
- Q2. 職域ワクチン接種の実施状況についてお聞かせください。
- Q3. 職域ワクチン接種を展開する際に大変だったこと、現在困っていることについてお聞かせください。
- Q4. 今後、秋から冬にかけて職域での新型コロナ対策に関する取り組みで特に重要になるであろうこと/他の参加者と共有したい情報・資料について教えてください。
2.最近の取り組み
- 「Q1. 新型コロナ第5波の中で、産業医として実施した新型コロナ対策についてお聞かせください。」という問いに対する回答をもとにした討議は以下の通り。
- 情報提供
-
- 第5波にあっても通常通り副反応をはじめとした情報提供を行っている。
- ワクチン2回目接種後も気を抜かず引き続き対策を行うように指導している。
- ワクチンを接種していない人への対応
-
- ワクチン接種が広まってきた中、ワクチン未接種が新たなフェーズの問題として議論に上った。
- ワクチン未接種/接種済を社内のデータに表示するのか、企業ごとのワクチン接種に対する意識の差など、様々な問題への対応の難しさがある。
- 事例対応
-
- 海外駐在をこれから行う際にA型肝炎ワクチンをはじめとした他のウィルスワクチンとコロナワクチンの優先度。
-
- コロナワクチンを優先している。
3.職域ワクチン接種の実施にあたり大変だったこと
「Q2. 職域ワクチン接種の実施状況についてお聞かせください。」「Q3. 職域ワクチン接種を展開する際に大変だったこと、現在困っていることについてお聞かせください。」という2つの問いに対する回答をもとにした討議は以下の通り。- <接種前の対応>
- 社員への情報提供
-
- 社員への説明資料作成
-
- ワクチン接種は強制ではない点を強調する必要があった。
- 免疫抑制剤を使用している人についてはあらかじめ主治医に相談する必要があるため、問診票に書くなどして告知に務めた。
- 質問対応
-
- 接種前に直接産業医への質問は多くなかったが、接種直前の問診時には質問が多かった。
- 造影剤のアレルギーを持っている患者への接種の可否について質問された時、日本語での医療情報が少ないため海外の情報(CDC等)を参照した。
- 「特殊例」に該当する社員からの相談対応
-
- 二回目接種ができなかった人へのフォロー
-
- 基本的には職域接種の別日程で処理するが、地域の大規模接種を紹介することもあった。
- 患者が自ら新しい接種会場を見つけることは困難な場合、産業医が会場の確保を行うことがあった。
-
- 妊婦の接種について
-
- 当初は妊娠初期のワクチン接種は望ましくないとされていたため個別に対応した。今は妊娠の段階によらずワクチン接種に問題はないとされているため、接種を広く勧めている。
- 全体として妊婦のワクチン接種は進んでいる。
-
- 海外赴任先で他のワクチンを一回接種し、二回目を日本で接種する際の対応
-
- まだ国のシステム上では対応は存在していない。
- 産業医の個人的な判断として、問診員の判断をもとに二回目の接種をしている。
-
- 交差接種の事例もある(例:一回目はシノバック、二回目はmRNAワクチン)。
- 当日問診した医師から二回目の接種を断られた事例は今のところない。
- 今後ワクチンパスポートが広まるにあたって、この事例への対応が不安。
-
- 二回目接種拒否者への対応
-
- 一回目接種者のうち体感で数パーセントは存在している。
- 一回目接種でアナフィラキシーショックなどはなかったものの、具合が悪くなったり、恐怖を感じたり、最近の報道により心変わりしたものと考えられる。
- 説得は行うものの、説得を成功させることは非常に難しい。
- <接種時の対応、接種そのものの準備>
- 迷走神経反射について
-
- 部屋の大きさがほぼ同じ二会場にて職域接種を行ったところ、迷走神経反射の症例数が数倍違った。
-
- 多かった所は壁などが白く照明がシャンデリアで明るくチカチカする場所。
- 少なかった所は床や壁がグレーや濃い茶色でLEDの間接照明の場所であった。部屋の明るさが関係する可能性がある。
- 一回目接種で迷走神経反射が起きた患者に対して臥位で接種することで迷走神経反射を起こす患者を大幅に減らせた。
- オルゴールなどの音楽を流すと迷走神経反射が減る。
- 広い会場の方が狭い会場に比べて迷走神経反射が少ないように思えた。
- スタッフが頻繁に接種者に対して声かけを行ったところ迷走神経反射が増えた。
- ワクチンのロジスティクスと余りを出さない対応
-
- ロジスティクスによるワクチン入手困難は国のレベルの話で産業医から解決するのは困難。
- 余りを出さない工夫として、まず職場の人数の枠で充足させるようにし、余った場合には社員の家族などの関係者へ声かけすることで余りが出ないようにした。
-
- 余った場合はワクチン接種を社員の関係者によびかける旨をあらかじめ告知していた。
- 普段からの横のつながりの重要性が出た。
- 大学生への接種にあたってあらかじめ副反応についてのビデオを作成することで不安なく接種ができた。また夜間の副反応についてはホットラインを作成することで対応した。
-
- モデルナワクチンは通常1瓶で10回接種だが、2瓶で21回接種を行うことができる。
-
- マニュアルや厚生労働省では推奨していないが、ワクチンが人数分手に入らない場合、約1割増しで接種できる。
- <その他>
- ワクチン異物騒ぎについて
-
- 職域接種が一時的にできなくなり企業間のワクチンの融通があった。
- 当該ロットにあたり一時的にワクチン接種が延期になったが、その後すぐに入手できたので大事にはならなかった。
- ワクチン接種の地域格差
-
- 職域接種が一時的にできなくなり企業間のワクチンの融通があった。
4.今後の職域接種において重要な取り組み
「Q4. 今後、秋から冬にかけて職域での新型コロナ対策に関する取り組みで特に重要になるであろうこと/他の参加者と共有したい情報・資料について教えてください。」という問いに対する回答をもとにした討議は以下の通り。- 三回目のワクチン接種についてまだ企業に情報は入ってきていない。
- 若い人に対するワクチン接種への告知徹底。
- インフルエンザワクチン接種について
-
- インフルエンザワクチンの供給が減る関係上、接種の実施は企業による。
- インフルエンザワクチンは小児と高齢者優先で、社員への接種は行わない。
-
- デルタ株への感染対策を行っている限りインフルエンザワクチンは必要ないとの見解。