第112回検討会概要《新型コロナウイルスワクチン接種に関する総合討論》
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海外駐在員が駐在先で新型コロナワクチン(アストラゼネカ社製)を打った後に帰国した際に、日本でモデルナ社製のワクチン接種を希望するケースがあった(交互接種、いわゆる交差接種)。ドイツにある本社の産業医に相談したり、交互接種に関する論文を読むなどして安全性に関して検証した。日本では交差接種に関しての見解が統一されていないため、自己責任で行ってもらうために同意書を作成するなど、準備を行ったが、社内リーガルチェックや厚労省とのやりとりの結果、職域での交差接種は行わないこととなった。 (2021年7~8月時点の情報に基づき発表。)
(発表者:小笠原隆将)
ワクチン交互接種に関する厚労省通達に関して
交互接種に関して、交互接種が認められているワクチンの組み合わせ、2回の接種日の間隔などの情報について、厚労省の通達やホームページの情報などをもとに発表した。ワクチン・検査パッケージについてもその概要を説明した。
(発表者: 黒田玲子)
職域における新型コロナウイルス感染症対策に関する総合討議
- Q1. 前回検討会から現在に至るまでの新型コロナ対策
- ワクチン接種
- ワクチン接種率調査を実施した。
- Formsで無記名でアンケートをとって調べた。ワクチン検査パッケージをどう導入するか考える上での基礎資料を収集するために行った。
- Long-COVID(COVID-19後遺症)疑いのあるケースの健康管理
- ICU(中等症)に入っていたため筋力低下をふくめて後遺症。在宅で軽めの勤務から。自宅でのリハビリがひと段落したところ。
- Long COVIDを見てくれる医療機関が限られているので困っている。
- 相談窓口がある。https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/soudan/longcovid_leaflet.files/leafletA4.pdf
- COVID-19に感染した方の復職判定
- Q2. ワクチン接種状況の把握
- 接種者(職域接種で接種した者のみ)の名簿を、限定された社内スタッフが把握している・把握予定 4票
- 接種者割合(職域接種・地域接種問わず)を匿名調査等により、限定された社内スタッフが把握している・把握予定 2票
- 接種者割合(職域接種・地域接種問わず)を匿名調査等により、把握した・把握予定で、社員周知済み・予定
- 社内職域接種者は把握可能
- 把握していない
- Q3. ワクチン・検査パッケージの運用/緩和する行動
- ワクチン接種、検査実施を問わず行動緩和を進めている 1票
- 運用を検討している 4票
- 検討していない 4票
- プライベートの飲み会も含めて行動をまだ規制している。
- 会社主催のイベントをしようという動きはあるが、まだ検討中。
- Q4. ワクチン・検査パッケージに関するその他の状況・意見
- 社員に対して検査をするとしたら抗原定性検査になるだろうが、無症状の人を対象にすることや、素人がサンプルを収集することによる問題をどうするか。
- 予想有病率が上がってくると無症状感染者に対する感度が低いことで見逃しリスクが上がるため、第6波が始まったら抗原定性検査をストップしてPCRに切り替えるか、厳しい制限に戻すべきか。
- 抗原定性検査をこれまで意味がないと言ってきたが、ワクチン・検査パッケージのなかで使うことを認めることの矛盾の説明が難しい。
- 検査をするコストのことを考えると、やる意義がないのではないか。基本的な予防対策を徹底して、体調が悪ければ休むということにすれば十分。
- 本社(外資)方針でワクチン接種の有無を社員に確認することができないため、ワクチン検査パッケージのようなことはしない。
- 担当している一部の会社では、ワクチン接種者が8割以上となっているため、このパッケージを適用するのは適切ではなくても、会社として制限緩和をどのように考えるか、助言を行っている。(飲み会は社内外ともまだ時期尚早、それ以外は本人体調・社内と関係者の感染状況・地域の流行状況を見ながら緩和可、など)
- プライベート行動の制限については会社による。会社の中には飲み会などをしているところもある。ただしさすがに大人数で会食をしているところはない。
- ワクチン・検査パッケージは、大多数のイベント適応等が中心であって、会社に全般的に適応するのは適切ではない。
- Q5. 今後1~2か月の間に特に重要になる取り組み
- 第6波がきた場合に再度感染対策を強める必要がある。
- 県境を越えた移動の制限をどのタイミングで出すかなど。
- 出社を命じられることが増えて、通勤ストレスをこれまで以上に感じるようになった社員や、在宅ならまともだったという社員からの相談が増える
- ワクチン検査パッケージをやることになるとこれまで接種していない接種希望者が出てくる可能性があるが、特に主治医がいなかったりすると接種場所に困る可能性がある。第3回接種に紛れ込ませる?
- アドバイザリーボードの情報を見ながら、感染動向は見ている。
- 8-3ルールの運用
- デルタ株が猛威を振るっていたときは、1日だけの発熱者からも陽性例が出ていたので、厳密に運用していた。
- 検査を実施すれば8-3ルールに拘泥することはない。
- PCRを挟んで解熱後72時間にしている。
- 有症状だったら抗原検査でもいいのではないか。
- その他
- 交差(交互)接種が医学的に問題ないとしても、厚労省の枠組みに沿った接種でないためワクチン接種記録システム(VRS)に登録されず、公的な陰性証明が発行されないという実務的な問題が発生する。
- 発熱が3日続いて4日目下がった人に抗原検査キットを使うのはどうだろうか。8-3ルールを継続しているが、自宅待機期間が修了する前に出勤したいといってくる社員がいる。
- 抗原定性検査のキットを購入したら内閣官房に報告協力が求められている。
- 抗原定性検査を実施する際に職場に医療関係者がいない場合には、研修を受けて実施することが求められている。
- 在宅勤務の実施状況に関する調査
- https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/index.html