第126回検討会概要《飲酒ガイドライン活用のポイント/CORoNaWork projectの紹介》
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日 時:2023年9月9日(土)14:00-17:00
場 所:大手町ファーストスクエアカンファレンス(ハイブリッド開催)
教育講演:飲酒ガイドライン活用のポイント
演者:吉本尚先生(筑波大学)
抄録:
過剰なアルコール摂取は世界課題の1つで、国連の持続可能な達成目標にも含まれています。日本では健康日本21の指標として「生活習慣病のリスクを高める量」の飲酒者を減らすことが挙げられていますが、未だ達成されておらず更なる対策が求められています。厚生労働省では国民のそれぞれの状況に応じた適切な飲酒量・飲酒行動の判断に資するための飲酒ガイドライン作成の検討を、2022年10月より行っています。
現在公開されている飲酒ガイドライン案は、飲酒による身体等への影響、飲酒量(アルコール量)、飲酒に係る留意事項の大きく3点にまとめられ、飲酒量が少なくなるほど、飲酒によるリスクはより少なくなることなど、要点が分かりやすくまとまっています。背景にある理論や研究を紹介しつつ、ガイドラインの効果的な活用について、ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチの両点から私見を述べたいと思います。
特別講演:CORoNaWork projectの紹介
講師:藤野善久先生(産業医科大学)
抄録:
本発表では、産業医科大学が実施する、COVID-19流行下における労働者を対象とした疫学調査としては世界最大規模の調査であるCORoNaWork projectについて紹介する。2019年に発生したCOVID-19の世界的な流行は、日常生活のみならず、経済、医療に甚大な影響を与えた。日本においては、2020年12月に、第三波と称される本格的な感染爆発を経験した。労働者の働き方も大きく変化する中で、労働者の雇用状況、健康状況の変化は、緊急性のある公衆衛生的課題であった。この調査では、COVID-19流行下における労働者の社会環境状況(雇用、経済、生活習慣、医療など)と健康に関する影響を把握することを目的とした。約3.3万人の労働者を対象に、インターネットモニターによる質問票調査を実施した。本研究からは、感染対策に関すること、在宅勤務に関すること、孤独やストレスに関することなどを中心に検証を行ってきた。2023年8月時点で、68編の論文を発表するに至っている。発表では、その中から最新の知見について紹介する。
総合討論:
吉本尚先生、藤野善久先生のそれぞれのご講演の後に、質疑応答と総合討論を行った。吉本先生のご講演の後には、産業医から事前に寄せられた、飲酒問題やアルコール依存の対応をするうえで困ったことに関する回答について、吉本先生にお答えいただきながら、意見交換を行った。また、藤野先生には、若手研究者に論文を執筆してもらう工夫についての質問や、コロナによって変容した環境に労働者が適応し始めたことをどのように研究に反映させるかというコメントが寄せられた。