第129回検討会概要《有害業務への従事歴とがん罹患リスク:病職歴調査データベースを用いた解析/産業医ががんになった時の両立支援について考える》
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日 時:2024年1月18日(木)19:00-20:30
場 所:オンライン討議
論文紹介:有害業務への従事歴とがん罹患リスク:病職歴調査データベースを用いた解析
演 者:深井航太先生(東海大学)
抄 録:職場で化学物質を取り扱う労働者におけるがん罹患リスクは不明点が多い。本論文では、有害化学物質を扱う職場で働いた期間とがんリスクの関連を評価することを目的とした。労災病院グループの病職歴データベースを用いて、年齢、病院、入院年(2005-2019年)をマッチさせた男性がん罹患者120,278人と病院対照217,605人のデータを解析した。喫煙、飲酒、職業を調整しながら、労働安全衛生関連法規制化学物質を使用する職場での従事とがんリスクの関連を評価した。さらに喫煙歴との交互作用も検討した。従事歴3分位の最長群のオッズ比は、全がん1.13(95%信頼区間:1.07-1.19)、肺がん1.82(1.56-2.13)、食道がん1.73(1.18-2.55)、膵がん2.03(1.40-2.94)、膀胱がん1.40(1.12-1.74)と高かった。これらの関連は、喫煙歴のある患者で特に明らかであったが、喫煙と就労期間との間に有意な交互作用は観察されなかった。法令準拠型の化学物質管理を行っていても、従事期間が長い労働者では、がんの有意なリスク増加がみられた。職業曝露によるがんを予防するためには、職場における化学物質管理に関する今後のさらなる対策が重要である。
話題提供:産業医ががんになった時の両立支援について考える
演 者:大津真弓先生(合同会社ひまわり)
抄 録:産業医は、労働者の健康管理や適正配置への事業主への助言・指導等を職務とするが、担当事業所では一人体制の産業医が大半であり、自分や同僚産業医が病気になり、仕事と治療の両立支援を必要とする時に、適切な配慮を受ける事は容易ではない。元々労働者の支援をするのが職務であるからこそ、自身が病気になった事自体に自責の念に駆られ、本来なら支援が必要であっても、自分から声をあげづらいことも充分に想定される。本発表では、実際に産業医ががんに罹患した時に、仕事と治療と家庭生活の両立を行った具体的事例を提示し、当該がん患者が周囲から受けた有形・無形の支援や配慮について、一般化出来そうな事項をまとめ、発表する。
総合討論
産業医が健康上の問題により産業医業務を継続できなくなった自身または周囲の事例について、事前アンケートで情報を募り、その回答に基づく総合討議を行った。産業医が業務を継続できなくなった原因となった疾患・理由、および当該事業場におけるバックアップ体制などに関する回答が共有された。これらの結果をもとに、業務が継続できなくなった産業医を支援するための仕組みや制度についての討議が行われた。 複数の産業医がいる事業所では、日常から複数担当制を採用することが有効であるとの意見が出された他、専属産業医がいても嘱託産業医の契約をもつことが有用なのではないかという意見もあった。また、嘱託産業医を支援する取り組みとして、産業医コミュニティ内での相互支援の繋がりについて議論され、特に互いに信頼のおける産業保健専門家同士の「ゆるやかな連携」が望ましいという意見が出された。