第130回検討会概要《大学における IR の役割:IR 推進センターの立ち上げと活動状況/産業保健の理論と実践的価値を結びつけるプロフェッショナル産業医》
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日 時:2024年3月9日(土)14:00-17:00
場 所:エッサム本社こだまホール(ハイブリッド開催)
特別講演:大学における IR の役割:IR 推進センターの立ち上げと活動状況
演 者:上田陽一先生(産業医科大学学長)
抄 録:産業医科大学では、本学の教育研究における内部質保証の実質化に向けて令和2年4月にIR(“Institutional Research”の略称、直訳では“機関研究”)推進センターが学長の下に設置された。本センターでは、大学教育・研究に関する目標・事業計画の進捗状況の評価に必要なデータ・分析結果を提供し、全学的な教育研究活動のPDCAの推進を支援することを目的としている。令和3年1月に専任教員が着任し、2月には統合データベースが導入されて本センターの活動が本格化した。これまで学内の各組織に個別に保存されていたデータを集約・分析することにより、入試―入学―在学―卒業―卒後までを一貫してサポートする総合的な学生支援(エンロールメント・マネジメント)が可能となった。例えば、コロナパンデミック下でオンライン講義が主体となった学年とコロナ前の対面講義を受けた学年との学修成果の比較、学生生活や学習に関する実態調査と学業成績との相関、コンピテンス・コンピテンシー到達度の可視化などである。これらの解析結果をフィードバックすることで問題解決の方法を考案したり、大学運営方針の意思決定に寄与できることを目指している。
教育講演:産業保健の理論と実践的価値を結びつけるプロフェッショナル産業医
講 師:宮本俊明先生(日本製鉄株式会社)
抄 録:実はこれは2007年に私が産業衛生学会奨励賞を頂いた時の受賞講演のタイトルです。今回は医者歴17年の当時の講演内容を、それから17年たった2024年に振り返ってみて、少しは言ったことが出来てるのか、自分で検証してみようと思います。言行不一致で失笑を買うかもしれませんし、東日本大震災対応とかコロナ対策などフットワークを生かした活動は褒めてもらえるかもしれません。タイトルにあるプロフェッショナルを入れたかったのですが、これには理由があります。日本産業衛生学会全国協議会の英語名はAnnual Conference of Occupational Health Professionalsといいますが、この名称を提案したのは私です。英語に堪能な土屋健三郎先生が聖職の意味もあるProfessionalsには拘りを持っておられて1996年の鳥取での全国協議会で熱く語られたのが印象的で(昼食時につかまってレストランで熱弁を聞かされた)、自分の講演にも使ってみたいと思って温存していたものです。これまでの医師歴のちょうど折り返し点で言った内容を評価してみて、次の17年をどう生きるか..、自分自身も考える機会にしてみたいと思います。
研究報告:J-ECOHスタディの研究成果
2012年4月に開始されたJ-ECOHスタディは、参加企業の産業医との連携を通じて、定期健康診断、長期病気休業、在職中の死亡、心血管疾患などに関する様々なデータを収集してきた。これらのデータは、学術論文の発表に用いられるだけでなく、糖尿病発症リスク予測ツールや生活習慣チェックツールの開発にあたっても活用され、特に、糖尿病発症リスク予測ツールは、地方自治体や企業などで活用される事例が増えてきた。また、定期的に開催される検討会では、データの分析方法、整理の仕方、および得られた知見を現場でどのように活用するかについて議論されてきた。これらの議論が新たな研究を促すきっかけとなることもあり、J-ECOHスタディの成果創出という点で検討会は重要な役割を果たしてきた。