第137回検討会概要《聴覚保護具の遮音性能測定器を使用した労働衛生教育について》
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日 時:2025年4月10日(木)19:00-20:30
場 所:オンライン討議
話題提供:聴覚保護具の遮音性能測定器を使用した労働衛生教育について
発表者:伊藤 千与 先生(UBE三菱セメント株式会社)
抄 録:セメント製造業における騒音障害防止のための健康管理や労働衛生教育の取組事例を紹介した。特別則が適用される作業では、作業環境管理や作業管理が細かく規定されており、基本的に特殊健康診断で有所見者が出ることは少ない。一方騒音作業については、作業環境管理が難しいことや加齢性の聴力低下も相まって、騒音健診で有所見者に遭遇する。騒音障害防止のためには、曝露状況の把握と騒音性聴力低下の評価、適切な聴覚保護具の着用方法の指導とともに、作業環境管理・作業管理の改善の提案が重要であり、これらに関する取組を紹介した。また、聴覚保護具遮音性能測定器を使用した労働衛生教育により、個人の装着状況を可視化することで、保護具着用方法の指導を強化できる可能性が示唆された。啓発と指導強化により、保護具性能を最大化し、騒音性難聴の予防に寄与できるものと考えられるので、その教育内容について紹介した。
総合討論:職場の騒音対策について
ファシリテーター:深井 航太 先生(東海大学)
抄 録:伊藤千与先生の聴覚障害防止に関する研究結果を受けて、遮音性能測定器を用いた教育の有効性や、現場での聴覚保護具の装着確認について活発な意見交換が行われた。耳栓チェッカーの活用、耳栓とイヤーマフの併用、SNR値に基づいた推奨保護具の導入など、実務的な工夫が多数紹介された。また、昼休みや特殊健診の待ち時間を活用した教育、高齢労働者への配慮など、柔軟な教育実践の工夫も共有された。騒音職場においては、作業環境管理が困難な職場が多く、保護具による対応が中心となる一方、騒音下でのコミュニケーションや安全確保とのトレードオフも課題として挙げられた。骨伝導イヤホンの紹介や、聴力低下と認知機能との関連、ガイドライン改定に伴う変化なども議論され、従来の管理に加えて新たな技術も活用した統合的な対策の必要性が確認された。