第124回検討会概要《ヤマハの高齢化対策/多様な働き手・多様な働き方を支える産業保健》
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日 時:2023年6月8日(木)19:00-20:30
場 所:オンライン討議
研究動向:ヤマハの高齢化対策
演者:山本誠先生(ヤマハ株式会社)
抄録:
産業保健の目的は「仕事と人の適応」であるが、従業員の高齢化により、人の適応力は低下する。この対策として、1)仕事をより人間らしくすることと、2)人間の適応力低下を軽減する、の2つが考えられる。
ヤマハでは、1)の対策として、工場内の省力化や自動化が進んでおり、体力が落ちたとしても働きやすい環境改善をおこなっている。
また2)については、自前の健康管理センターにより本社のある静岡県の従業員約6000名に対して、循環棚卸式の健康診断を行っている。この健診の特徴は、午前中に健康診断の判定が完了し、事後措置も含めた対応が完了することである。これにより、保健指導も受診率は100%であり、全年代に保健指導を実施している。たしかに保健指導100%が高齢化対策と言えるかは意見が分かれるところであるが、集団としての健康状態の悪化を遅らせるかもしれない。
当日は工場の動画などを示しながら、高齢化対策にもつながっている一つの例として、ありのままの現状を参加者と共有したい。
総合討論:多様な働き手・多様な働き方を支える産業保健
話題提供:人事院「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」
ファシリテーター:黒田玲子先生(東京大学)
抄録:
話題提供者の黒田は、人事院にて“質の高い公務の持続提供のために必要な国家公務員の柔軟な働き方”を検討するために2022年1月~2023年3月に15回開催された「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」の議論に参加する機会を得た。
現在の国家公務員の働き方の実態、課題と合わせて、研究会で議論された概要とその報告書(今後、令和5年度人事院勧告に反映される予定)について紹介する。
研究会での議論と報告書の主な内容は、1)より柔軟な働き方(選択的週休3日を可能とする労働時間の事前割振制、フレックス勤務、雇用形態を問わない制度の適応)、2)テレワーク勤務、3)勤務間インターバル(原則11時間とすることが望ましいと提言)、等についてである。国家公務員の働き方は、民間法制(労働安全衛生法など)の適応を受けず人事院規則に基づいているため、一般的な労働者の働き方とやや異なる部分がある。しかし、近年では、民間法制に基づく先行優良事例を参考に、人事院規則や公務運営が更新されている実情もある。そのため、今回行なわれた議論は一般的な産業保健にも参考になるところが大きいと考え、話題提供を行う。
総合討論概要:
検討会に定期参加されている産業医を対象に、「多様な働き方・多様な働き手」というテーマで行った事前アンケートへの回答をもとに、参加者で総合討議を行った。アンケートでは、様々な属性の労働者をサポートする制度・取り組みが社内にあるかどうかを尋ねた。
アンケートの結果、「障害をお持ちの労働者」「家事・育児・介護等の家庭内ケア責任を多く背負う労働者」「女性労働者」「高年齢労働者」といった働き手を支える制度や取り組みがあるという回答が多かった一方で、「兼業・副業を行う労働者」「派遣・嘱託社員など非正規雇用の労働者」への取り組みは少ないことが分かった。
討議では、これらの制度・取り組みについての具体的な内容について回答者に紹介してもらったほか、参加者がそうした属性の働き手に関して、これまでに産業医として対応した事例についての情報交換を行った。