第134回検討会概要《運輸業における健康起因事故防止のための健康管理》
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日 時:2024年11月14日(木)19:00-20:30
場 所:オンライン討議
研究動向:運輸業における健康起因事故防止のための健康管理の一例
発表者:坂本 宣明 先生(ヘルスデザイン株式会)
抄 録:運輸業での健康管理として、高速バス会社の産業医の立場から健康に起因する事故防止のための取り組み事例を紹介した。まずは、社内の健康情報を取りまとめるために、産業医、保健師、各営業所の事務担当者が連携して、普段から健診事後措置を行う体制を整えておくことが大切である。バス乗務員の健康管理では、健康起因事故(乗務中の事故原因が疾病起因であるもの)の防止が重要である。特に留意すべき疾患は脳心臓疾患であり、事故原因の3分の1、死亡原因の4分の3を占める(平成25~令和4年の統計、国土交通省)。脳心臓疾患対策の一例として、脳MRI検査や心臓CT検査を雇入れ時健診と3年に1回実施している。また脳心臓疾患以外にも、睡眠時無呼吸症候群や、眼科疾患(緑内障や黄斑変性症など)による視野障害対策も重要であり、これらのスクリーニング検査を定期的に実施している。これらの健康管理により、早期発見・早期治療につながったケースは少なくなく、運輸業の乗務員に対して徹底した健康管理を実施していくことが重要である。
総合討論:「過重労働対策」に関する事前アンケートについて
ファシリテーター:大津 真弓 先生(合同会社ひまわり)
抄 録:10人の産業医(専属3名、嘱託7名)が回答した事前アンケート結果をもとに、産業医として契約事業場の過重労働対策にどのように関与すべきかについて議論を深めた。企業の存続に関わるような業務遂行を果たすことは、従業員の健康リスクを上回る経営判断がなされる場合もある。このことを産業医は理解した上で、面談を通じてドクターストップをかけるべき状況か否かを専門家として判断することが求められていることを再認識した。長時間労働対策は本来人事・労務が取り組むべき課題であり、人材の獲得やAI・IoTを駆使した労働生産性向上も解決策に繋がる。また、過重労働の背景には顧客企業からの過度な要求があることも多く、請負構造上の課題を理解し、行政による規制が必要ではないかといった共通認識を得た。さらに、過重労働になりがちな管理職の健康管理が重要であることも議論された。管理職のマネジメント力向上に関する教育を産業医が支援できる可能性があることを確認した。